株式会社中村農園

レポート・球根情報



オランダ出張報告(2016/6/8)

お客様 各位

オランダ出張報告

株式会社中村農園
中村光輝

 

 現在、オランダでは“ダッチ リリー デイズ”と題して、育種会社や輸出会社、計14社が同じ日程で展示会を行っています。この時期は最新品種も多く出展されるため、近年の品種動向や将来の方向性も見ることができる非常に興味深いイベントです。
 ダッチ リリー デイズ直前の5月30日から6月2日にかけてオランダを訪問して参りましたので、以下に簡単にご報告いたします。

 

~ 進むOT開発と綺麗なオリエンタル ~
 昨今、オランダの育種会社ではオリエンタル(以下略はORと記す)の開発を終え、OT開発に力を入れる会社が多くなっています。背景には諸外国での需要拡大や、オランダの球根生産者が既存のオリエンタルから、(球根の生産性が高い)新しいOTへと生産品種を切り替えていることがあげられます。
 一方で、今回の訪問中「未だなお、オリエンタルを超える美しいOTはない。」という意見を何度も耳にしました。オランダでも特に切り花生産者の多くが、品種を選ぶ際は第1に“綺麗であること”、第2に“切り花の輸送性が良いこと”、第3に“花を長く楽しめること”を重視しており、マーケットもまた、こうした特徴を持つ“ゆり”を求めていると言います。
 流行にとらわれ過ぎず、切り花という商品に求められる要素を冷静に判断している人々がいることは、オリエンタルを好む日本にとって競争相手でもあり心強い存在とも言えます。
 以下に各育種会社の現状を展示品種の写真を交えてご報告いたします。

 

【フレッター】
 フレッター社では毎年の様に白のOTが発表され、近年は葉の形やバランスなど細部まで改良されてきました。ピンクは世界的な嗜好によって濃いものやロビナのようなピンクが数多く発表されてきましたが、今回訪問した展示用ハウスには徐々に薄い色の品種が増えていました。
 以前のような色が抜けたピンクではなく、しっかりと“色の乗った薄いピンク”が展示されており、今後、改良がさらに進むことで日本でも受け入れられるような品種となることを予感させます。

写真:ナンバー品種(左、白OT) アシエルト(右、ピンクOT)

 

【マック ブリーディング】
 マック社はOTでは珍しい花粉退化の品種・デボラ(白)やLA並みに生育期間が短いコルベット(赤OT、早生過ぎて花の写真が撮れませんでした。)など、興味深い特徴の品種を持っています。
 加えて、今年新たに発表したアスタナ(白OT)は花が揺れても花粉が落ちづらいため、花弁が汚れにくい品種です。ゆりの欠点となり得る花粉の問題に対し、昨今、八重や花粉なしの品種が開発される中、異なるアプローチで消費者の要望に応える発想は今後も注目です。

写真:デボラ(左) アスタナ(右、ともに白OT)

 

【バンザンテン】
 以前からバンザンテン社は世界的に好みの偏りが少ない白のオリエンタルを開発してきました。すでに日本でも知名度の高い品種が数多く控えています。その中でも、極早生で花持ちが良いサイレンティアは草丈が低いものの南半球産での利用に期待の品種です。
 また、濃いピンクのオリエンタル、ムンダーナは上根のはりが強いため栽培が容易で、切り花での水揚げも非常にいい品種です。
 このような花を長く楽しむことができる品種は、今後も業務需要などにとって大切な存在です。

写真:サイレンティア(左、白OR) ムンダーナ(右、ピンクOR)

 

【ワールド ブリーディング】
 現在、日本でも人気が出てきている品種の中には、ワールド ブリーディング社のものも多くあります。徐々に販売球の生産量が増えてきたカトーネ(ピンクOR)や、今後が期待されているミスティロ(ピンクOR)およびシスト(白OR)は草丈が取れてリン付もいい品種です。
 これらは、昨今、リン付が物足りない品種が多くある中で、小球から大球まで使えるため、春から秋まで幅広い季節、生産地で継続的に出荷することが可能となります。

写真:カトーネ(左上、ピンク)、ミスティロ(左上、ピンク)、シスト(右、白OR)

 

【デヨン リリーズ】

 デヨン社は近年オリエンタルの開発を行っており、リン付が良く草丈の取れる品種を持っています。
 一方で、LA・スカシでは花粉なし・八重の品種を各色取り揃えており、既存のものよりも草丈が10㎝伸び、ボリュームがある品種になっています。加えて、今後はより綺麗な八重になるよう開発が続けられています。

写真:スクービドゥ(左、オレンジ)、ベントレー(中、ピンク)、ナンバー品種(右、赤ともにLA)

 

【フェルデガール】【マークリリー】
 フェルデガール社は個性的なポット(鉢植え)用の品種を持っています。イージー ライフ(気楽な生活を送ろう)コレクションでは、3種類の八重・花粉なしのポット用品種があり、屋外での栽培で雨に降られても花粉で花が汚れることがなく、花弁が落ちても変色しないほど花持ちが良いことから、手入れいらずの品種です。
 マークリリー社ではLAのブラッシュシリーズがあり、スカシのタンゴ系よりも草丈やボリューム感を改善しています。開花したものはピンクブラッシュのみでしたが、黄色のイエローブラッシュも、既存のLAに劣らぬボリュームでした。

写真:デリケート ジョイ/フェルデガール(左、ポットアジア)、ピンクブラッシュ/マークリリー(右、LA)

 

~ 最後に ~

 弊社では今回の訪問で見てきた最新品種を含む多くの品種を、育種および輸出会社の協力によりサンプル提供を受け試験栽培しています。今はまだ生産がされていない品種も、事前に日本の環境下で栽培し品種特性を把握しておくことで、販売球が流通し始めた際、皆様にご説明できるよう準備しています。
 明日、6月9日(木)から12日(日)に開催させて頂く、“第10回 ゆりフェスタ2016”では、現在流通している数多くの品種を栽培展示しております。
 ゆりフェスタでは、毎年、一斉開花に挑戦しており、ご来場いただいた皆様にオリエンタルやOT、LA、スカシなど異なる栽培日数の品種を1度に見て頂ける数少ない機会です。是非、お越しいただきますようお願い申し上げます。          

以上、よろしくお願い致します。