株式会社中村農園

レポート・球根情報



オランダ出張報告(2006/11/16)

中村 慶吾

平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
11月上旬(10月31日~11月11日現地滞在)にオランダへ出張し、現地調査を行って参りましたのでご報告いたします。

1.まるでフランス並!!  今年の気候
別紙“2006年オランダ気候グラフ”及び、 “ヤンデウィット社 2006年オランダ産ユリの生育状況と圃場のようす”(2006/10/13付 当社ホームページ掲載)の通り、今年のオランダの気候は過去にないほどの異常気象となり、世界的な気候変動の影響がこれほどはっきりと感じられた年はありません。
7月には月間平均気温が例年より4.9℃も高く、100年来最も暑かった月となりました。その後、8月には低日照・多雨となり、9月、10月の気温は平年の8月、9月並に高く、11月になっても平年より やや暖かく推移しているようです。オランダ人は、「今年の気候をフランスのようだ」と表現しています。
生育中の温度による球根への影響は分かりませんが、収穫時期に温度が高いと、作業中球根が傷つきやすく、すでに輸出会社へ到着しているスカシ・LAの中で腐敗により引取り拒否をしたものが例年より多いそうです。又 選別・パッキング後の冷蔵期間も温度が下がりにくいなど、細かい部分での影響が予想されます。

2.まだ緑の畑も!  圃場の状況
今回の訪問では、異常気象の影響をできるだけ正確につかむため、時間をかけて多くの地域とロットの調査を行いました。オランダ国内でも地方によって気候がやや異なります。
全般には 秋の気候が暖かいため、例年になく枯れ方が遅く、特に南部にはまだ緑が多く残っており、収穫可能になるまで数週間を要するようです。

・ 北オランダ(アムステルダムから北西の方面)
海に挟まれた地形から、内陸に比べて気温地温の変化がゆるい。
畑の様子は、概ね茶色になっていたが、葉はまだ残っていた。

・ 東オランダ(ドレンテ地方)
オランダ東北部で比較的海岸にも近い。
枯れ方は他の地方よりも早く、枯れた葉が落ちていて、古茎も抜けやすくなってきていた。

・ 東オランダ(オブライセル地方)
オランダ東部でドレンテ地方の南部に位置し、ドイツ国境付近にも球根生産地がある。
ちょうど葉が枯れてきているところで、全体的には茶色に変っているが、所々に緑の葉が見られた。

・ 南オランダ(ブラーボント地方)
オランダ南部の街アイントホーフェン辺りで、上記の地方よりも土質が土っぽくなる。
大半がまだ緑の状態で、枯れ方はオランダで最も遅い。

・ 南オランダ(リンブルグ地方)
オランダで最も南に位置する地方で、ドイツとベルギーに挟まれた、最も内陸的な気候。
ブラーボントと大差なく ほぼ緑の状態か、半分くらい茶色に変ってきている程度。

3.オリエンタルもやや肥大不足!?  球根の状況
オリエンタル圃場で、試し掘りを行い、種球と現在のサイズを比較し、肥大を調査しました。正確なことは実際に収穫し選別してみるまで分かりませんが、印象としては普通の肥大の圃場があり、肥大の悪いところもあり、平均してみると、やや肥大不足といったところです。すでにスカシ・LAの収穫が終盤ですが、肥大は良くなく、特に大球が少ない傾向があります。ホワイトヘブンの18-20、LA品種の16-18などで、予定数量の半分程度といった話もあり、オリエンタルだけが例外とは考えにくい。
本年オランダの球根には、下記のような特徴があります。

●植付け密度により、肥大が異なる。
小さい種球は肥大を確保するため、植付け密度を粗くします。逆に比較的大きな種球は太りすぎないようやや密植にされます。全般に肥大は良くない中で、密植のものの肥大は更に良くない状況です。したがって大球が少ない傾向になるのだと思います。
同じ圃場の隣どうしの畝に、粗く植えた8-10cmと、密植した10-12cmがあり、試し掘りをしてみると、出てくる球根は8-10の方が10-12よりも大きい事がありました。

●例年に比べ、二芽がやや多い。
7月以降の高温や乾燥、温度の上下等が影響してか、特に南オランダで二芽を見る事が多かったように思います。

4.意外な結果!  芽形成の状況
例年、同時期にオランダを訪問し 芽形成の調査を行っております。個々の調査ではぶれもあり分からないことが、さまざまな地域と品種の調査結果をまとめると、全体としての傾向が見えてきます。
通常、芽形成は秋に気温が下がってから進むため、今年の芽はまだ小さいのではと予想しておりましたが、意外にも結果は下記の通りでした。

調査球
サイズ
(cm)
外リン片 内リン片 芽長
(mm)
芽幅
(mm)
葉枚数 茎長
(mm)
茎幅
(mm)
2006年11月調査平均 17.6 10.6 18.1 28.5 8.8 42.4 13.1 5.4
前年比 (%) 99 85 92 106 104 105 105 102
2005年11月調査平均 17.8 12.5 19.7 27.0 8.5 40.4 12.5 5.3
2004年11月調査平均 18.7 10.5 23.4 22.8 7.4 35.6 10.3 5.3
2003年11月調査平均 18.0 11.4 20.3 28.0 9.4 13.3 6.6

昨年に続いてやや大きい芽と言えます。11月中旬現在も、平年に比べて暖かい気候が続いており、今後も収穫されるまでの間、芽形成が続くことが予想され、今後の動向に注意していきたいと思います。

 

5.莫大な投資や奇抜なアイデアも!  収穫期間の短縮化
近年、オランダの1生産者あたりの作付面積は増えてきている一方、秋の気候は年々暖かくなっており、自然に任せて枯れを待っていると、収穫開始時期は遅れてしまいます。
しかし、倉庫での労働力(特にポーランドやルーマニアからの出稼ぎ労働者)確保の面で、クリスマスまでに選別を終えなければならないなどデッドラインがあり、短い期間で効率良く作業できるよう、収穫機の大型化や選別機の高度化が進められています。
南オランダでは、枯れ方の遅れはすでに問題となってきているようで、今回の訪問中、ガスバーナーを使って圃場の青々としている地上部を軽く焼き、ショックによって枯れを始める方法が取られているのを初めて見て、驚きました。

6.ソルボンヌは価格上昇へ、LAで欠品相次ぐ  球根相場等
オリエンタルは肥大不足の懸念が強まり、ピンク系品種は底を打ち、ソルボンヌを中心に相場は上昇しています。白系品種は(今後の中国動向の影響が大きく)予断を許しませんが、シベリアの大球は余剰感がなくなりました。
スカシ、LAはすでに相場は上昇してしまいましたが、肥大不足から(面積の小さい品種を中心に)欠品報告が相次いでおります。大半の品種につきましても完売が近づいています。

圃場調査風景
東オランダ ドレンテ
大型掘取機
(まるで戦車)
焼き葉処理
(南オランダ リンブルグ)
ソルボンヌ芽
(南オランダ ブラーボント)
北オランダ
クリスタルブランカ畑 クリスタルブランカ畝 クリスタルブランカ球根 クリスタルブランカ芽
 北オランダ(ドレンテ)
ソルディラ畑 ソルボンヌ畑 ソルディラ畝 ソルディラ芽 ソルボンヌ畑 ソルボンヌ球根 ソルボンヌ芽
ロンバルディア畑 ロンバルディア球根 ロンバルディア芽 リアルト畑 リアルト球根 リアルト芽 ティバー畑
ティバー畝 ティバー球根 マニサ畑 マニサ球根 コンカドール畝 コンカドール球根 コンカドール芽
 中央オランダ(ドイツ国境付近)
シンプロンターボ畑 シンプロンターボ球根 シンプロンターボ芽 アカプルコターボ畑 アカプルコターボ球根 ティバーターボ畝 ティバーターボ球根
ティバーターボ芽 ソルボンヌターボ畝 ソルボンヌターボ球 カサブランカターボ畑 カサブランカターボ畑 カサブランカターボ球根 リアルトターボ畑
             
カサブランカターボ芽  リアルトターボ芽  マルコポーロターボ畑  マルコポーロターボ球根 シンプロン畑  シンプロン球根  シンプロン芽
           
カサブランカ畑 カサブランカ球根 カサブランカ芽 コンカドール畝 コンカドール球根 コンカドール芽
 南オランダ(ブラーボント、リンブルグ)

ブラーボント

           
カサブランカ畑 カサブランカ球根 カサブランカ芽 シベリア畑 シベリア球根、根 ソルボンヌ畑
              
シベリア芽 ソルボンヌ畝 ソルボンヌ球根 アクティバ畑 アクティバ畝 アクティバ球根

リンブルグ

ソルボンヌ畑 ソルボンヌ球根 ソルボンヌ芽 ルレーブ球根 ルレーブ芽 ルレーブ大密植 畝
ベラドンナ畑 リアルト畑8-10 Tomas マレロ畑 マレロ球根 マレロ芽 ソルボンヌ畑Klink
ソルボンヌ球根Klink ソルボンヌ芽Klink イエローウィン畑 イエローウィン球根 イエローウィン芽 ロビナ畑8-10
ロビナ球根8-10 ロビナ芽8-10 ウィルケアルベルティー畑 マザーズチョイス畑 ウィルケアルベルティー球根 マザーズチョイス球根