株式会社中村農園

レポート・球根情報



オランダ出張報告(2017/6/15)

お客様 各位

オランダ出張報告

 

株式会社中村農園
中村光輝

 今年は切り花生産者の方数人とご一緒にダッチ リリー デイズ直前の6月1日から6月6日にかけて、オランダを訪問して参りました。以下、簡単にご報告いたします。
 今年のオランダは5月が記録的な暑さで、全体的に予定よりも前進していました。私たちが訪問した際は、LA・スカシが満開で、OTや早生系のオリエンタル(略、OR)が咲いており、切り前の姿と花を同時に見ることができる絶好のタイミングでした。

 

【バンザンテン】
 バンザンテン社では“色”について、学ぶことができました。バンザンテン社のピンクや赤の品種には、白をベースに色を重ねていく手法を取っています。その為、代表品種であるビビアナやレクサスのように、他社には無い“輝き”や“鮮やかな色”を出すことができます。
 弊社の展示会でも、“ベルリンゴ(桃・OT)”や“クロッサー(桃・OR)”、リパッソ(赤・OR)などは、一際目を引く存在でした。また、訪問時は開花していませんでしたが、夏の暑い時期にピンクが濃くなる、ジ・エッジタイプのORや、開花時は白に近く、徐々にピンクが現れる“カメレオン”と言う品種も紹介されていました。

上から、リパッソ(赤OR)、ベルリンゴ(桃OT)

 

【フレッター】
 フレッター社では、最新品種の現状や将来の方向性を聞くことができ、希望が持てる話を聞くことができました。
 近年、育種会社はOTの開発に力を入れており、純粋なORの開発は終わりつつあります。一方で、現在はOTにORを繰り返し掛け合わせることで、ORの比率が75%のOTがあります。これらの品種はOTとORの境目が無くなってきています。
 また、昨今、勢いを増している中国系の国々向けの育種が進められているように感じていました。しかし、特定の国だけをターゲットにした開発はリスクが大きく不安定で、様々な色を作り全世界で使われる品種の開発も積極的に行っていました。実際にフレッター社のハウスでは、年々、日本でも使える色のOTが多くなっています。

上からバストーン(桃OT)、シャブリ(白OT)

 

【マック ブリーディング】
 マック社では、既に発表されている品種が多くありました。その多くがOTで新たなORの開発はしていません。白は“アスタナ”や“デボラ”、黄色は“ベルビル”と“エルドレッド”、赤は“コルベット”、“レッドフォード”、“フェドラ”など全てOTです。これらの多くはオランダの球根生産者にライセンスが売られ、球根生産が始まる・増加する品種が多くあります。一方で、全ての品種が切り花生産者の好む品種とは限らず、ザンベジやテーブルダンスに継ぐ、日本でも使えるヒット品種が生まれることを期待したいと思います。

上からエルドレッド(黄OT)、フェドラ(赤OT)

 

 

【デヨンリリーズ】
 デヨンリリーズ社では八重や花粉なしのスカシを開発しています。これらの品種はユリの新しいマーケットを作り出す可能性があります。一方で、既存の品種の中には栽培環境により、きれいに形質が現れない場合があります。年間を通じて花型が安定することで、消費者の方々が安心して使うことができる品種になると思います。こうした弱点に対し継続して改良を重ねており、弊社でも日本の環境に適合するかを試験したいと思います。

上からセーフショット(橙A)、ボールドイーグル(赤A)

 

【ワールド ブリーディング】
 多くの育種会社は最新品種を披露するものの、販売球が流通するまでに5年以上かかるものも少なくありません。そのため、ワールド ブリーディング社は球根生産面積が増加する品種を数多く紹介し、今年新たにライセンスが売れた品種には印をつけるなどの工夫をしています。例えば、“シスト”、“カステラーニ(白・OR)”、“ディアマンテ(桃・OT)”、“カトーネ(桃・OR)”、など。
 弊社の展示会でもワールド ブリーディング社の品種は数多くあり、OTでもリン付きが良く、日本人が好む色合いの品種があります。例えば、早生系で草丈の高い“ロセリ”は夏場も使え、リン付きが良くボリュームがある“ディアマンテ”などとともに、生産量が増えています。

上からカステラーニ(白OR)ディアマンテ(桃OT)

 

【フェルデガール】
 フェルデガール社はイギリスの量販店向けにコンパクトで草丈が低い品種や、イタリアへの輸出用品種を開発しています。また、切り花の生産コストを軽減するための早生系品種の開発や大量生産に適した品種や小球が使える品種などを紹介しています。
 また、ポット用のジョイシリーズは個性的な品種で、花粉なしも増えています。

上からプレシャスジョイ(赤A)、マウンテンジョイ(黄白A)

 

【リリーカンパニー】
 ドライセールス用の特殊な品種を数多く持っており、イージーシリーズなどは営利栽培用にも広がりを見せています。オランダの切り花生産者の中には少量の特殊なスカシを組み入れ、自社の宣伝や新しい需要の開拓を行っている人がいます。

左から、イージーサン(黄A)、イージーダンス(複色A)、No.品種(タンゴA)

 

【その他】
 昨今、八重の品種が数多く発表されています。その代表例がローズリリーで、現在、日本では希少品種として取り扱われています。一方で、中国などは生産量の増加とともに取扱量を急増させ、イギリスでは新たに量販店向け切花などにも採用されています。

左から、アイシャ(白OR)、サマンサ(赤/白OR)、エディタ(桃OR)

 

 

【最後に】
 今回、オランダの育種会社では、例年になく多種多様な品種が紹介されていました。しかし、新しいタイプの品種はしばしば既存の評価基準では扱いづらいものも多く存在します。一方で、八重や花粉なし、おしゃれな小リン系などの出現により、ユリの多様性を改めて見直す時期になっていると思います。
 訪問時、度々、「How to ・・・!(いかにして・・・すべきか!)」と言いながら、“それぞれの品種をどの様に生かしていくか”を話し合いました。今後は、既存の品種を含め固定概念に縛られず、消費者の方々に“どの様に使って頂くか”を考え、新たな需要を掘り起こすことで、まだユリを使ったことのない方にもユリを飾って頂くきっかけになると思います。

 以上、よろしくお願い申し上げます。