株式会社中村農園

レポート・球根情報



ニュージーランド出張報告(2008/1/15)

中村 裕司、中村 慶吾、野村 豊八

平素は格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。
1月8~13日に、ニュージーランド(以下NZ)の全てのゆり球根生産会社を訪問し、全ロットの生育調査を行って参りましたのでご報告いたします。

1.面積増加も販売球は昨年並み!?
NZの生産面積は以下の通りです。

2005年 2006年 2007年 2008年 前年比
NZ 生産面積推移(ha) 111 126.7 166.3 197.5 18.8%増

08年産の作付面積は、バンザンテン社、アイランドバルブ社を中心に+31.2ha、18.8%の増加となりました。増加率はやや落ち着いてきた感がありますが、大きく伸びた昨年が39.6haの増加、NZの1戸の平均作付け面積が40ha程度になりますから、31.2haは決して小さな数字ではありません。
ただし、今年の面積には、2年・1.5年栽培の1年目や、リン片面積の増加が多く含まれているため、販売球面積は昨年と大きく変わらないとのことです。
NZ全体で約200haの生産となり、北半球のフランスと同等の生産面積となっています。 アイランドバルブ社、バンザンテン社、バッカー社が増加する一方で、サザンフローラ社は減少しました。

 

2.涼しくも日照多く、乾燥に対応できれば力のある球根へ!?
植え付けが始まる(春)9-10月はやや涼しく、10月上旬に1週~10日間 雨が続き、植え付けは一時中断しました。
10月3週に-2℃程度の遅霜が起こり、一部の生産者で生育途中の葉が凍害を受けました。11月もやや涼しい天候が続きましたが、12月に入ると急に暑くなり、日照は多く、雨が少なく、潅水がかなり必要となりました。通常クリスマス頃まで潅水は不要なのですが、今季は12月以前から潅水を始め、訪問時は ほぼ毎日行っていました。
(現在)夏は海風が吹くと時々寒くなりますが(20℃程度)、天気は良く、暑い日は30℃を越えます。
別紙は、バンザンテン社、バッカー社のあるラカイア地区に近い、クライストチャーチの気候グラフです。これまでのところ、平年値と比べ、日照が多い事以外は特別な異常はありません。
畑の状況は、例年になくきれいです。比較的穏やかな気候であったこと、日照が多いことに加え、潅水が多いため葉の汚れが少ないことも好印象の一要因かも知れません。
昨年の夏が寒く、曇天で日照が少なかった気候に比べ、今年はこの天候が続けば、力のある球根になると予想されます。
球根肥大については、まだ何ともいえない時期です。現在、摘花が終盤に入ってきていますが、この時期までユリは地上部を作るためにリン片を消費し、植え付け時のサイズとそんなに変わりません(肥大の良かった昨年は同時期にすでにいくらかの肥大が見られた)。今後1月の後半から4月頃までの気候により、肥大が進んで行きます。1月現在、雨が少なく圃場はかなり乾燥してきており、人工的な潅水がどれだけ施せるかが重要なポイントになってくるでしょう。
それにしても、この時期のニュージーランドの日差しは恐ろしく紫外線を含んでいます。日本のジリジリと焼ける熱線とは違い、涼しいのに真っ黒に日焼けしてしまいました。ご旅行の際には、日焼け止めと帽子をお忘れなく!

 

3.各社の状況
「アイランドバルブ社」(北島東部ネイピア):25ha以上。昨年から日本向け輸出が始まり、評価は悪くない。2年目、3年目と品質を落とさずに行ければ、十分期待できる環境がある。

「バンザンテン社」(南島北東部ラカイア):100ha以上。昨年から大きく面積を伸ばしており、気が付けば(危険ラインとも言われる)100haを超している。選別ラインの増強を予定、また野菜生産者の冷凍施設を収穫期に借りるなど準備が進んでいる。07年産で球根消毒のミスがあり(粉剤から水和剤に替えたところ、球根への粘着性が弱く、十分な消毒効果が得られなかった)一部の球根でカビ・腐敗問題を起こしたが、以前から使っている薬剤に戻し、再発を防止する。07年日本に輸入された南半球産球根の約半分がバンザンテン社で、期待は大きく、当社も情報提供等、今後とも尚一層の協力を続けていきます。

「バッカー社」(南島北東部ラカイア):35ha以上。昨年、冷凍庫を増設、今年は倉庫部分の拡張を予定し、作業効率の向上を目指している。数年前に一部バイラス問題を起こしてから、品質への意識が高まり、信頼できる生産者となった。ロビナの生産がある。

「サザンフローラ社」(南島南部ゴア):20ha以上。過去4年は異常気象?か、雨が多く、夏の気温と日照が低かった。今年は天候に恵まれ、畑の状態は良い。3000㎡を超える大きな新しい倉庫と冷凍施設が完成し、作業効率 及び 収穫後の管理は大幅に改善が期待できる。 あとは、それに見合った球根生産を目指すかどうかで、他の生産者同様、(デヨン社に加え)オランダの球根生産者の委託栽培等を模索しています。

アイランドバルブ社(ネイピア) アイランドバルブ社(ネイピア) バンザンテン社
自社圃場(ラカイア)
バンザンテン社
(ラカイア、ラプトレ氏圃場)
潅水状況
(ラカイア、ラプトレ氏圃場)
バッカー社(ラカイア) 当社英語版HP
(バッカー社にて)
サザンフローラ社(ゴア)

以下、写真は全てラカイア地区のものです。

カサブランカの畑 クープレットの畑 コンスタンタの球根 シベリアの畑
ソルボンヌの球根 ソルボンヌの畑 ティアラの畑球根 リアルトの球根