株式会社中村農園

レポート・球根情報



オランダ産球根に迫る南半球産の脅威(2008/02/14)

オランダの花き専門誌「Flora Culture international」2008 January より
翻訳、要約:和田まり子

 『花の球根といえばオランダ』という古くからの独占状態は徐々に壊れつつある。フランスやニュージーランド、チリのような他国での生産は、主にオランダ企業の指導の下、急速に成長している。  チリにおいての特徴は、教養のある企業家達が巨額の投資をしていることだ。私たちはチリが新たな花卉球根生産の中核になる日を見ることになるのだろうか。 


独占状態のオランダ産に迫るSH産の脅威

チューリップはオランダの素適なシンボルの一つとして捉えられ、多くの外国からの観光客がチューリップ畑を期待して訪れている。しかし、オランダ国外の目覚しい球根生産増加とは逆に、1999年には世界の花き球根生産面積の約60%のシェアを占めていたのが、2004年には54%にまで減少している。

 世界の花卉球根生産地域は増加しており、特にチリや中国、ニュージーランドの成長は著しく、オランダの脅威になりつつある。その中でもとりわけチリは、世界的に最も成長してきた生産地域であり、他の地域にとって発展のモデルともなっている。 1990年代末、100haほどしかなかった球根生産は現在では(チューリップ・ゆり合計で)500haほどまで増加しており、チューリップとゆり球根の輸出量は2000年から2004年のわずか4年間の間に2.26倍になった。主な輸出先としては、オランダ(52%)、アメリカ(17%)、ついで日本(14%)となっている。


チリの平均日給は10米$(約1,100円)

チリの球根生産の大きな強みとしては、オランダ産球根が長期冷凍されている時期に新球を供給できる事、低い労働賃、そして球根生産に適した土壌の余地を持っていることだろう。  また、チリの大きな球根会社は他国と違い、チリ人自身によって経営されており、野菜会社や種苗会社といった世界的に活躍している農業関連会社に付随しているため、広大な設備や研究室を持っている。そして、チリは輸出大国であり、EU(2003年)やアメリカ(2004年)との間に非関税協定を結び、日本との間には植物検疫の協定を結んだ。またニュージーランドに比べ、ヨーロッパや北アメリカ中部への輸出コスト面でも有利な事から、チリは同じ南半球のニュージーランドにとっても強力な競争相手になりつつある。

 

 安い労働賃はコスト面ではプラスになるが、それは同時にあまり高い教育を受けていない労働者達でもあるといえる。また、現在の大統領政権下で労働賃金は上昇する見込で、世界的な輸送費の上昇もコスト増の要因となっている。しかし、最も大きな要因として、輸出業務(パッキングや輸送)のための過大な設備投資がかさみ、品質面が犠牲にならないか心配ではあるのだが・・・。

チリの会社は近代的な経営スタイル

オランダのオリエンタル球根生産者たちは、国内市場においてチリの球根という競争相手の脅威を感じている。35%のゆり球根は南半球から輸入されており(注:この数字が正しいかどうか当社では確認致しておりません。:中村農園)、現在オランダは過剰生産となっている。

それまで、オランダ国外での球根生産はほとんどがオランダ人によって管理、運営されてきた。知識と技術、機械装置はオランダから輸出せざるを得ず、現地での文化や規制もあり余分なコストがかかるのではないかと心配し、多くの生産者が国外での球根生産に対して乗り気ではなかった。
それはチリも例外ではなかったが、現状は十分な教育がなされた現地の人々がオランダの会社からのアドバイスを受けながら独立した経営を行っている。また、現在チリの生産者は球根販売をオランダの業者に依存するか、オランダの生産者、切花生産者とも直接契約している。また、ある会社は世界中と輸出契約を結んでおり、そこには確かに可能性が存在している。より遠くの北半球や中央アメリカ地域、また日本へと範囲を広げつつある。そして、チリの生産や研究、設備に目を向けると球根産業に多くの可能性があることが分る。チリは以前はオランダの花球根ビジネスの通過点にすぎなかったが、自立した生産という強みは状況を変化させている。もしチリの潜在能力が花開けば、独占的なオランダの花き球根産業は確実に大打撃を受けるだろう。オランダの球根生産者達は本当に彼ら自身でその質問を投げかけるべき時期に来ている。“何が我々に残るのか?”と。

 切花用のチューリップ球根供給においても、シーズンオフに供給する南半球産は次第に北半球産のアイス・チューリップ(10ヶ月以上の-1.8℃冷蔵管理の名称)の競争相手になりつつある。
現在はチリ約100ha、NZ約100ha、合計200haで、オランダの生産面積約1万haに比べ、まだまだごくわずかに見えるが、次第にチューリップ球根においても脅威となりつつある。
アイス・チューリップの試験栽培

ダイアモンド球根会社のクープマン氏は1989年から20年近く、球根産業に携わってきた。彼は言う、球根生産で大切な事は適切な潅水、雑草管理、収穫後の正しい冷蔵管理、清潔な施設である。収穫後、球根が選別され、一定の条件(温度や湿度)でうまく処理され、バイラス検査される。切花用球根を供給する競争相手が増加することに対してオランダは一体どう対応して行くべきなのか?”
まさに脅威だと言わざるを得ない。