株式会社中村農園

レポート・球根情報



オランダ出張報告 (2009/6/1)

中村慶吾

平素は格別のご高配を賜り、誠にありがとうございます。
5月中下旬にオランダに出張し、現地の新品種開発状況 また球根情勢につき調査を行ってまいりましたのでご報告致します。

① OTの開発合戦が激化!
OT開発(Tの血の導入)は、純粋オリエンタルにはなかった黄色を生み出すために始まり、イエローウィン、コンカドールがその代表です。その後、濃いピンクのロビナのような、同色でもオリエンタルとは違った雰囲気(色調)の品種が登場し、更にはバイカラー(2色咲き)や、中間色の品種が現在注目され、実際に日本で切り花出荷がされています。
08‐09年は、次の世代として、白(クリーム)、淡いピンクの品種開発競争の様相です。これまでのOTはオリエンタルにはなかった特殊な色ではありますが、全般に色調が強く、メイン品種というよりは、限定需要向けという認識でした。(ロビナ・ドナトは大量出荷だと販売・価格維持に苦労するかもしれませんし、ニンフ、グルーワイン、アボカド等もそうかもしれません)

良い白のOTができれば、それを既存の色と掛け合わせる事で、より薄い色が生み出しやすいため、白と淡ピンク(薄い色)の開発は同時進行のセットと言えます。 キューケンホフ リリーパレードのOT1位 テーブルダンスは、日本人が好きそうな桃ピンクです。また、展示はありませんでしたが、バンザンテン社のマスター(淡ピンクOT)、ワールドブリーディングの イプノーズ(白OT)の色は大量に生産されても耐えられるものだと思います。

OTの良い特性として、葉焼けが出にくい、温度耐性が強い、また球根生産が早い等、球根・切り花の両生産面でメリットがあり、いずれはLAがアジアティックを追い越したように、OTがオリエンタル市場のメインとなっていくだろうと言われています(!?)。育種会社も次世代マーケットの主導権をにぎるため、競争/協力しています。これまで、新しい色を作り出すことに集中していたOTですが、今後は枝の短さ、葉の短かさ丸さ、花型の調整など、形状を改善していく開発が望まれます。

 テーブルダンス イプノーズ

② 新しい品種へのチャレンジが必要!
09年オランダ産の作付面積は、ブローカーによる電話調査の結果(当社HP 5月 7日付記事ご参照)、オリエンタル/OTが▲14%、LA・スカシが▲26%と昨年に引き続き大幅な減少と言われています。オリエンタルでの減少品種として、アクティバ、ウィルケアルベルティ、シンプロン、ティバー、マルコポーロ、メデューサ、ロンバルディア、イエローウィン、スターゲザーなどが挙げられ、いずれも人気が減少し 球根価格が低迷(または売れなかった)などのためです。LA、スカシでも同様の品種が多くあります。
上記のような品種は、私たちにとって周年出荷のメイン品種ではないかもしれませんが、特定作型や、作業効率等を考えて導入されていて 作り慣れているものが多く、将来的にはこれらの品種の球根生産が減少し続ければ、私たちは他の品種でカバーしていく必要がでてきます。
今、経済環境が悪く、既存の品種へ回帰している感があります(正解と思いますが)、こんな時だからこそ、品種を広げる、自分に合った品種を探すことが、数年後の経営に意味をなすと思います。
(その頃は景気が回復していると期待しましょう)。
キューケンホフ公園リリーパレード(当社HPで、品種写真をご紹介しています)を見ると、昔は100ある新品種で使えそうなのは片手で数えるほどしかない事もありましたが、現在育種の水準は高まり(育種会社が互いの品種を材料に使っているため? 類似化している?)、球根生産に繋げてほしいと思う品種が多くありました。

オリエンタルでは、バンザンテン社の シグナム(白OH)はOT以上のボリュームがあり、存在感がありました(OTよりも花が大きく、今後このような品種を軸にした開発が進めば、オリエンタルの方が 実は改良の余地があるのかもしれません)。 その他の白では、OH1位 マック社のアステリアン、オリジナルグループのプレミアムブロンド、マークリリー社のホワイトヒーローも完成度は高かったと思います。

2009年キューケンホフ公園 展示総合評価

1位 マックブリーディング社(左)  2位 バンザンテン社(右)

③ きて見て さわって ユリフェスタ2009!
今週木曜(6月4日)より、当社試験農場にて、品種展示栽培のイベントを行います。古い品種や、既存品種が生産減少(停止)になっていく中、ご自身の目と手で品種チェックをしてみて下さい。
茎の硬さや、葉焼けの比率、リン付の分布(3-5リン表記でも、3主体と5主体では意味が異なる)など、多くの品種が30球以上植え付けされていますから、みなさんの現実的な評価と、実際の生産のヒントとなればうれしいです。
幸運にも焼ける品種はちゃんと焼けました、茎も全部がガチガチの作りではありません。ここ数日の暑さで色がボケた物も。
(これもみなさんの適切なご判断のために・・・ )