株式会社中村農園

レポート・球根情報



チリ出張報告 (2009/7/21)

中村慶吾

いつも大変お世話になっております。
7月16日より、南半球の球根生産国であるチリを訪問し、球根の生育状況 及び 情勢について調査してまいりましたのでご報告致します。

 

◎マイルドな気候
高知を出発してからアメリカ ロサンゼルス経由で、チリのサンチアゴ、そして国内線の乗り継ぎと、34時間が経過したころ、飛行機は段々と高度を下げて行きます。
窓から見えるチリ南方の空港 プエルトモントは薄暗い中、一面真っ白に凍っていました。機内アナウンスによると、朝8時現在の外気温は-2℃とのこと。夏の日本から、収穫時期の冬に来たことを思い出し、身が引き締まる思いがしました。
駐車場にならぶ車の窓は真っ白く、辺りの草原の雑草も氷できらきらしていたほどです。

ところが後から生産者に話を聞いてみると、ここ数日は特に温度が低いようですが、実は今年の冬は全般に暖かいのだと言います。
今シーズンを振り返ると、(植え付けは9-10月で)12月が平年に比べ暖かく、1‐2月の夏は平年並み(昨年のような極端に暑いことはなかった)、そして3月も温度は高くやや乾燥ぎみで 夏が長かった印象だそうです。初霜が降りたのも平年よりだいぶ遅く軽かった。4月以降も温度が高めに推移し、長い秋のあと いつの間にか冬になったような状態。

球根の生育にとっては、春早くから暖かく、夏が暑すぎず日照に恵まれ、秋が長くゆっくりと枯れていくというのは最高の条件で、今年は気候的に恵まれています。
収穫時期の天候は地域によってやや異なりますが、一部地域で1‐2週間程度 少量の継続的雨が降り収穫が進まなかったものの、全体として雨は少なく、昨年の大雨(高速が通行止めになったり、小さな橋が決壊した)に比べればずっと穏やかで、収穫は既に80-100%終了、平年に比べれば1‐2週間は早いことになります。

 

◎見ていて楽しくなる球根
上記のような気候で出来た球根は、全般に非常に硬くしまっていて、重いと感じます。
実際にサザンバルブの選別担当者によれば、平均で1球当たり0.5-1gは重いそうで、 硬い球根は、収穫段階での傷も付きにくく、目立った腐りもほとんど見られません。ただし、晴れた日の収穫は、球根の周りの土が落ちやすいため、機械との接触面に小さな傷が入りやすい。そのため、品種や収穫時期(早い)によっては表面の傷が目立つものがありました(問題はない程度)。
球根肥大は植え付け密度などによりかなりブレがあるものの、全体としては平年並~少しだけ良 とのことで、ショートの心配はなさそうです。
(ただし、肥大に関わらず、サイズ間でのバランスによってはショートが起きてしまう?)

 

◎芽が大きい、そして太い
秋が長かったせいか、どの生産者(地域)でも芽形成は進んでおり、昨年(大きい芽だった)に比べても、大きいことが分かります。
さらに、太いのが今年の特徴で、球根の形質と、芽の太さを見る限りでは、リン付の良かった昨年と同等もしくは、それ以上(?)の力が期待できます。
通常、2年栽培(ターボ球など含む)は、1年栽培よりも芽が大きく、早いタイミングで使うのに適していますが、今年のチリでは逆に1年栽培の芽の方が大きくなっています。(これは、ニュージーランドでも一般的で、南半球産についてはオランダとは別に考えた方が良さそうです。)

余談ですが、“09年オランダ産”の植え付け時期の天候は良かったので、2年栽培と条件的に変わらず違いが出にくい年になるだろうと言われます。(08オ産は、遅霜で植え付けが遅れ、そのあと急激に暑くなったため、早くから生育できた2年栽培との差が大きかった年) オランダでは、生産コスト削減のため、2年栽培が増えてきており、チリでも同様です。
球根の使用時期や品種に合わせて仕入れ 及び 納品をさせていただいきたいと思います。
南半球産でお受け取りになった球根が、どの地区のどういった生産か、ご興味がありましたらぜひご意見ご連絡下さい。また、当社試験農場での南半球産球根の試験(LA:11月開花、オリエンタル/OT:1月後半開花予定)もぜひ合わせてご覧ください。

 

○訪問を終えて
先週(訪問時)は、関係のオランダ人たちもチリに訪問しており、行く先々で一緒に調査をすることができました。彼ら、一生懸命球根をチェックしていましたよ(私もですが)。オニングスさんは扱い品種も多いですから、調査ロット数も大変。
球根生産においては、(切り花同様)経験者の目と、妥協しない姿勢が大切です。問題があれば、一緒に考え解決をしていく、またみんなが考えを出し合って いい球根を届けて行きたいと思いました。
2002年から継続してチリを訪問してきましたが、振り返ってみると、毎年いろいろと変化があり、施設や作業、肥料や潅水の考え方もずいぶんと(オランダ的に)高度化してきたと思います。
ここ数年 チリ産球根のリン付や力が、ニュージーランドとあまり遜色なくなったのもそんな影響です。
切り花生産側として、私たちは両方の球根をうまく使っていくことができるようになりました。こういう年だからこそ、改めてロットナンバー試験を試験ハウスで行おうと思っています。一言でチリと言っても、ロサンヘレ、バルディビア、リオブエノ、プイェウエ、オソルノ、プーランケと、地域も気候も様々です。また、冬場の切り花生産の場合、生産コストなどを考えても、単純にボリュームが大きくてリン付が良い(良すぎる?)ことがメリットとも限りません。
一緒に経験し考えながら、現実的な選択と、また生産地側への提案ができるよう、皆様のますますのご協力をお願いいたします。

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アーリントンの球根(Sone) クーリアの球根(SN) ソルボンヌの芽(SB) マニサの球根(SB)
ロンバルディアの球根(CB) アドバンテージの球根(SN) シベリアの球根(SB) ソルボンヌの芽(SN)
マンボの球根(SH) カサブランカの球根(SB) オリジナルラブの球根(SB) シベリアの球根(SN)
ソルボンヌの畑(Sone) リアルトの球根(SN) カンタリーノの球根(S&B) 施設(S&B)
セラノの球根(S&B) バティステロの球根(SN) リオブランコの球根(SH) ソルディラの球根(CB)
収穫風景 洗浄ライン フェアリーテイルの芽(S&B) ロビナの球根(SB)


※略語の意
SN:ソネ社
SB:サン&ブリーズ社
S&B:サンハーベスト社
CB:チリボーデン社