株式会社中村農園

レポート・球根情報



オランダ出張報告(10月版)(2018/10/22)

お客様各位

オランダ出張報告(10月版)

2018年10月22日
株式会社中村農園
中村慶吾

 いつもお世話になっております。
 10月中旬にオランダに出張して参りましたので、ご報告申し上げます。

1. オランダの気候について

 「今年のオランダの気候は、フランス以上の夏だった」と言われるほど、春から夏にかけての気温が高く推移し、雨が少なく乾燥が続きました。地球温暖化の影響は、日本でも肌で感じられるものですが、国土の4分の1が海抜ゼロ㍍以下のオランダでは、更に深刻な影響が出ているとも言えます。先日オランダを訪問した際に聞いた話では、オランダは2030年までに、CO2排出量を半分に減らす目標を掲げ、その為に天然ガスの使用を段階的に制限するようです。既に現在建築中の住居については、ガスが引けなくなっているとのこと。

 少し過激に聞こえるかもしれませんが、自然環境も技術も、過去数十年の変化より、これから数年で起きることの方が大きいような時代。過去に経験したことのない環境で違いを生み出せるのは、古い経験に基づく理論より、実際の現場の変化を理解できる技術やノウハウだと言えます。

 

 2. 高温の影響

 平年のオランダは、世界の球根生産国(チリ・ニュージーランド・フランス)と比べると、やや“涼しい”気候になりますが、今年のような、フランスのように“暖かい”場合の傾向を、簡単に表にまとめてみました。

 さて、今年の球根についてですが、過去の同時期のデータがないため、今回の調査データについて比較ができませんが、平均値を求め、それに近い数値だった芽が、下の写真になります。収穫まで1か月以上ありますので、今後も少し形を変えながら芽形成が進むと思いますが、現時点では、昔のレポートで“銃弾形”と呼んでいた、根元の茎部分が張った形をしており、リン付が良くなる傾向を示しています。
促成時期での小球利用においては、年により差が出やすく、リン付が少なめになることもありますが、今年は期待できそうです。(断定はできません)

 

3. 地上部の枯れ方

 10月上旬までは、写真の右側のように、かなり緑の状態が多かったそうです。10月は気温がやや高く、雨が少なく乾燥していたため、ボトが入らず、枯れが進まないという事でした。10月中旬に私が訪問した際は、写真左側のように、茶色い圃場が多くなっていました。1-2週間で急速に色が変わったと言います。(下写真は2年栽培圃場です)

 下の写真は枯れていく様子です。すごくきれいな葉っぱをしていますよね。オランダでは珍しい、ボトがまったく入らないで枯れた葉っぱ。ボト予防の消毒を早めに止めて、秋にボトが入ると百合が枯れるというオランダの常識もまた、今年のような環境の中では、違った結果に。

 

4. 冷蔵について

 急速に枯れ方が進んできてはいますが、オランダの10月中旬は、ブログでもご紹介の通り、最高気温が20~25℃にもなり、オランダ人にとって夏のような気候でした。日照が強く、地温も低くなく、球根や土を触っても、冷たいという感じはしませんでした。これは球根の休眠打破に必要な、いわゆる“本冷”が平年に比べて遅れることを意味します。

 弊社のロット試験場の隣で、カサブランカの国内養成を行っておりますが、夏から秋に収穫する段階では、全く冷蔵が効いていない状態です。古くから、暖地の養成では人工的に冷蔵をかけるノウハウがあり、不十分な冷蔵のリスクもそうした経験から学習されています。今は、南半球産があり、オランダからの船の期間も長いため、1月に国産や、オランダ産新球のオリエンタル・ОTを植えることは、ずいぶん少なくなってきたと思います。
ところが、南半球産は、今年のオランダのように保管の難易度が高く、抑制に適さない貯蔵施設や運営状態の場合、本来のパフォーマンスを維持できません。そこで、端境期を埋めるため、オランダ新球を早く入荷させることにつながるわけですが、温暖化ゆえにリスクは年々高まっているように思えます。

 題目「2」の中の表に、収穫時期の関連要素に「生産者の手帳」と書きました。これは、球根生産者にとって、オランダではクリスマスの関係で、収穫期限が決まっており、面積に対する必要な作業日数から、毎年、収穫をスタートする週が決まっている生産者を表しています。今年は、10月前半に20℃を超える中、一部のLAの収穫が始まりました。気候に関わらず収穫はスタートし、輸出会社まで届けば、毎年のスケジュールで現地積出しが始まります。
アノマリーという言葉があります。理論的には説明できない事象と言う意味ですが、南半球産の物量と、抑制の球根保管品質、そして続く、オランダ産の冷蔵の効き、抑制への保管性は、どこかでつながっているのかもしれません。

 国内の球根流通拠点を考える上で、球根専用冷凍施設と手間をかけた運営努力は、温暖化とともに重要度を増してきているものと感じています。

 

5. 11月1日は、オールセインツ(All Saints’Day) 

 日本では10月31日のハロウィンが、仮装のお祭りのように認知度を上げておりますが、カトリック諸国では、11月1日の「諸聖人の日」が重要な花の需要期となっています。日本のお盆に近い慣習で、亡くなった方のお墓に花を捧げます。オランダでは、この慣習が最近なぜか増えてきているようだとの話も。

 ディズニー・ピクサー映画(アニメ・2017年)の「リメンバー・ミー」が扱う、中南米の「死者の日」と共通するものです。
この映画は、人類と生命の繋がりや、祖先(自分のルーツ)への敬意や尊厳、そして自分自身の理解を深める事を、わかりやすく教えてくれます。百合が伝えようとしているモチーフとも似ている気がしました。

 

6. 11月23日は「11月もゆりの展示会」in 中村農園試験農場!!

・平成最後のオランダ産抑制試験。国内最大(級)の414品種。
・百合に触れてOK。畝の内側の茎の硬さを体感して下さい。
・今年はハウスだけでなく、切花の基礎実験なども予定しております。

 生産者の皆様、花業界の方々、ご家族ご友人もお誘い合わせのうえ、紅葉深まる高知にどうぞ遊びに来てください。お会いできるのを楽しみにしております。

 

以上