株式会社中村農園

レポート・球根情報



オランダ出張報告(2010/6/24)

中村 慶吾

いつも大変お世話になっております。
6月14日~20日までオランダへ出張し、圃場調査、育種最前線、ワールドカップの貴重な体験など、現地調査をしてまいりましたので、ご報告致します。

1.寒いオランダ

ワールドカップ予選第1位通過をしたオランダ人の気持ちとは裏腹に、オランダの気温は平年に比べ、ずいぶんと低く推移しています。

4月 植付け 平均気温は平年値を上回っているものの、17.18日、23日に遅霜が発生するなど、一部植付けにも影響。
 5月 初期生育 5月20日まで、平年値を3-5℃下回る気温で、下旬も平年並みかやや低く推移。月間平均気温が2.2℃も低いという、かなり寒い結果。
 6月 初期生育~発蕾 ちょうどゆりフェスタがあった頃がやや暖かく、最高気温が25℃を超えた日もありましたが、訪問時最高気温は20℃前後で肌寒く、一日中15℃を下回るような日もあり、空港ではジャンパーを着ている人が見られました。

・雨量については、意見が分かれます。植付け後一度も潅水していない(適度に雨が降っている)という生産者もいれば、丁寧に既に何度も潅水したところもあります。数値的には平年並みですので、平年並みでしょう。

・植付け時期がかなり幅広く分かれています。3月の天候は良く、3月下旬には順調に植え付けがされましたが、4月のフロストの影響などで、最も遅い部分は、4月の24-25日頃でした。

・全般の生育は1-2週間の遅れ。6月第1週までは、一部で丈が低いなど心配されていましたが、フェスタ頃(6月1-2週)に暖かくなり、1週間で15cm位伸びたそうで、訪問時の畑の状態は平年並みでした。

▼圃場の百合の葉に多くのフロストダメージが見られました。4月(一部5月初めにも)霜がきつく、潅水や防霜シートなど対策が取られましたが、得に南部生産地で葉にダメージが出たものがあります。

生育自体は順調で、葉に傷が付いているだけですので、大きな影響はないと思います。フロストダメージの後、ボトが発生しましたが、きちんと対処され止まっています。

○チューリップは、肥大不足が予想され、生育が遅れているためGステージがクリスマス用に間に合わないのではと言われています。一般に、チューリップが悪い年は、百合も良くないと言われています。
球根相場は、世界的な需要の回復と生産調整及び肥大不足懸念(?)からか、全体的に上昇し続けています。

2.育種最前線

6月上旬は、オランダの育種会社の開発ハウスが開花を迎えます。平年だと6月1-2週頃が見ごろですが、今年は低温の影響もあって、訪問時にも多くの品種を見ることができました。

○育種会社ごとのセンス
近年の育種技術は上達し、大きい花、小さい花、コンパクトさ、葉の形、花形などずいぶんと狙った育種ができるようになっているようです。そこで大事になってくるのは、育種者ごとのターゲット・最終目標だと感じました。

バンザンテン社は、生産のしやすさを基本に、OTラインで他社に追いつき追い越せと努力していますし、コブラに次ぐ赤の長寿品種も考えています。

マークリリー社(フレッターと統合)は、枝が長くないこと、突起のない花弁、葉焼けのない品種、という風に、欠点を排除する品種選抜が魅力です。全般にバランスがよく、フレッター社は良い買いものをしました。元マークリリーの育種者であるアリーさんの意見をうまく取り入れる事が、フレッター社の発展に大きく寄与すると思います。

ワールドブリーディングは、葉の形が見事に整理され、コンパクトで一斉にリンに色が乗るタイプが多いと思います。当社としても、現在つながりを深めている会社の一つです。

マックブリーディング社は、大きな可能性を秘めています。開発規模はフレッター社に匹敵するほどで、統合したBTラインの恩恵も大きいと思います。リン付きが良いのに大きな花が多く、今後美しさの追求を期待します。
また、OT以外の異種間交配ラインでも、更なる活躍を期待します。アリーさんと日本の消費者側マーケットについて話せたこともよかったです。

デヨンリリー社は、アジアティックの開発が会社の起源であり、同時に良いLAを持っています。ゆりフェスタではマルセル社長が来社され、今後の日本でのプロモーションについて前向きな話ができました。育種ハウスでは、今までにないような赤紫(ブドウ色)のLAが印象的で、彼らがその可能性に気づいてくれると嬉しいです。

フレッター社は、 さすがに世界を代表する育種会社だけあって、育種素材の多さに驚きます。これまで、イタリアや新潟など夏場の生育に重点を置いて品種選択がされていましたが、今後成功するためには固定観念を脱ぎ捨てて、新しい時代に求められる品種選択がされることを期待します。マークリリーの買収によって、良いTラインを得たことが取りざたされていますが、私個人的には、フレッター社が育種の親に対して閉鎖的でなく、オープンになっていくきっかけを得た事の方が重要な気がします。そういった流れの中で、中村農園が役に立つことになるかもしれません。リアンさんは私の説明に興味をもってくれました。

○私たち、百合切花を作る側としましては、たった一つのゴールじゃなくて、育種会社それぞれの個性で、幅広い品種が提案されることを望んでいます。 来年のゆりフェスタは時期を多少調整する必要があるかもしれませんが、多くの育種者に来ていただき、生産者・花屋さん・市場・アレンジャーさん・一般消費者という異なる意見の渦に加わっていただけたら、どれほど素晴らしいことでしょうか。
Lily Unlimited “ユリに限界はない”(by Onings bv).

3.ワールドカップ in Holland

月曜日(予選リーグ初戦)は、オニングスのエバートさん、ジョンさんと圃場視察をしていました。仕事で試合見れなくて申し訳ないなぁと思っていました。お昼になって近くのレストランに入ると、そこには大きなスクリーンが。

オランダの試合はちょうどお昼すぎだったので、食事をしながらオランダ対デンマークを観戦(写真はその様子)。
近くの小学生が授業として観戦しており、試合前から勝利のポーズを記念撮影するあたりはさすが。
日本対オランダ戦は、ステンボーデンのケースさん宅で観戦しました。警戒していたシュナイダ―の一発で失点。終盤のPKかと思われたシーンや岡崎のシュート(惜しかった)で一瞬しーんとしましたが…
でも日本はデンマークに引き分け以上で決勝進出ですから、きっとやってくれるでしょう!!
私はオランダからチリへ移動となります。移動中のマドリッドより。